聞き取れているのに、数字と否定が残らない
点が落ちる理由は、たいてい英語が分からなかったことではありません。35語を聞き終えたあとに、数字、否定、列挙が手元に残っていない。理解は済んでいます。残らないだけです。
GPが「血液検査と、必要ならCTスキャン」と言う。Centrelinkの職員が「解雇手当があると待機期間が付く。ただし申請は今すぐ」と言う。「必要なら」を落とすと可能性の検査が確定に変わり、「ただし」を落とすと急ぐ理由が消えます。合格は63/90以上、かつ各対話29/45以上。減点は1語で起きます。
英語試験を終えて自信のある人ほど、録音せずに本番へ行きます。約300語の対話2本を両方向に、一度で言い切る作業は、日常のどの会話にも出番がありません。練習の中心は、録音して、落とした情報を数えて、次の1本で減らすこと。単語帳はそのあとで足ります。
メモの取り方。書くのは、記憶が持てないものだけ
挨拶や「ご用件は」のような定型は書きません。書いている間に次の語が流れます。1セグメントに多くて4行か5行。
- 数字と単位は聞いた瞬間にアラビア数字で。「4 wk」「72 km/h」「15 Mar」。単位があれば、72と60のような入れ替わりを防げます。
- 否定は語の前に✗。「✗ nausea」「✗ afford now」。否定はプレッシャーの中でいちばん反転しやすく、反転すると話者の主張が正反対になります。肯定の確認は✓。
- リストは縦に並べます。採点者は項目を数えるので、横に流し書きすると1つ消えます。
- 固有名詞と制度名は英語のまま。Centrelink、JobSeeker、Canterbury Rd、薬の名前。あとから記憶で作り直せません。
- 条件と因果はif、→、butで残します。「maybe」「if needed」を落とすと、可能性の紹介が約束された紹介に変わります。
略語は自分だけが読めれば足ります。wk、mth、yrs、b/c、w/、Q:、@、/(または)を固定し、上向き矢印は数が増えるときだけに使います。書く言語は速いほう。英語で聞いた語は英語の略語、日本語で聞いた語は漢字1字(薬、検、済)で。カタカナは遅いので外来語は英語の頭文字で書き、数字と名前だけは聞こえたままの言語で残します。
実例。日付、転換、否定が3セグメント続けて来る
Centrelinkでの給付の相談は、NAATIが挙げる出題分野(地域・社会福祉サービス)そのものです。下の3セグメントには、日付とリスト、因果と「ただし」の転換、否定の確認が順に出てきます。同じ情報が残っていれば、記号は自分のもので構いません。
Client (JA)3月15日が最終日で、4週間分の解雇手当と未消化の有給休暇を受け取りました。
last day = 15 Mar got: 4 wk redundancy & unused annual leave
日付とリストで、どちらも価値が高いです。日付は正確に「15 Mar」と書きます。正確な日付は点になり、「3月中旬」では点を落とすからです。次に受け取ったものが2つ。4週間分の解雇手当と、未消化の有給休暇で、「&」でつなぎます。「4 wk」という数字を残します。解雇手当の額が後の待機期間を決めるので、落としてよい細部ではありません。項目が2つなので、「got:」の下に2行書きます。
Service Officer (EN)The redundancy payment will affect your waiting period. With four weeks' redundancy, there will be a waiting period before payments start. However, it's important to apply straight away to start the clock running.
redundancy → waiting period (before $ starts) but apply now = start clock
このターンは原因と対比です。解雇手当がお金の開始前の待機期間を引き起こすので、「→」で示します。「redundancy → waiting period」。次に「but」で重要な転換です。それでもすぐに申請して、時計を動かし始める。「but」を落とさないでください。意味は「待機期間はある、でもとにかく今すぐ動く」だからです。これがないと、まだ申請しても意味がないように聞こえます。「= start clock」と書いて、なぜ今申請すべきかを拾います。
Client (JA)待機期間中は何も受け取れないんですか?住宅ローンの支払いがあるので心配です。
Q: ✗ $ during wait? worried: mortgage repay
彼女は否定を確認しているので、印を付けます。「✗ $ during wait?」、つまり待機期間中はお金がない、という意味です。「いいえ」の確認は、注意しないと逆になりやすく、「はい、支払われます」では答えの正反対になります。心配の理由「mortgage repay(住宅ローンの返済)」を残します。彼女の質問を動かす本当の関心事だからです。「so(だから)」は、職員が今言ったことから結論を引き出していることを示します。
3セグメントで紙に残ったのは、日付が1つ、数字が1つ、2項目のリスト、矢印が1本、✗が1つ。それだけで訳は組み立て直せます。「先月失業した」「子どもが2人いる」は前のセグメントで書き取ってあるので、ここでは繰り返しません。
日本語と英語がずれる5か所を、練習の単位にする
- 敬語のレベルを1行ごとに決める。英→日では、医師や職員の発話はです・ます体に軽い尊敬語(「お薬は出ていますか」)を乗せる程度で足り、「〜させていただきます」を重ねると時間を食います。日→英では「伺いたいんですが」を「I'd like to ask」の平叙文に戻します。
- 文末の動詞を待つ。「薬は飲んでいたんですけど、効かなかったんです」は最後まで聞かないと英語の動詞が決まりません。逆方向では35語を頭に置いたまま動詞を文末へ回します。練習は、否定で終わる日本語の文を10本、聞き終えた瞬間に英語で言う。
- 万とthousandを組み替える。日本語は4桁ごと、英語は3桁ごと。one hundred and twenty thousandは「12万」、「1万5千」はfifteen thousand。日付は日本語が年→月→日、英語は日→月。桁の大きい数字を毎日10個、声に出して往復します。
- カタカナ語を英語だと思わない。クレームはcomplaint(claimは保険金や給付の請求)、マンションはapartmentかunit、サインはsignature。逆に、GPやbulk billingのように在住者が英語のまま使う制度名は英語で残し、必要なら短い説明を添えます。
- 落ちた主語を補い、一人称で訳す。「昨日から熱があって、薬もらったんですけど」には主語がなく、英語ではI、my son、sheのどれかを選びます。取り違えれば歪曲です。話者になりきる一人称が基本で、「彼女は〜と言っています」に逃げないこと。
詰まったときの動き方。止まらない、戻らない、足さない
セグメントが終わった瞬間に声を出します。最初の1語が出ないときは、主語と動詞だけ先に言う。「I lost my job last month」まで言えば、残りはメモが引き出します。長い無音は「著しいためらい」として減点対象で、アクセントは採点されません。考え込む沈黙のほうが、訛りより高くつきます。
- 途中で抜けても最初からやり直さない。最後まで訳し切り、抜けた情報は文末に足します。
- 同じ文を2回言わない。繰り返しは時間を食い、聞く側には追加に聞こえます。
- 足さない。「つまり〜ということですね」の補足は追加として減点されます。話者が言った分だけ、言った順で。
- 方向を毎回確認する。方向はセグメントごとに入れ替わります。音が流れる前に「次は英語」と頭で唱えます。
- 聞き直しの条件は先に確認する。可否と回数はNAATIの受験者向け指示と予約後に届く案内に書かれています。使える場面があるなら、数字を聞き逃したときのために取っておきます。
練習計画の目安。5週間で形式・メモ・分野を回す
通訳の経験があれば短く、録音が初めてなら長くなります。週数は約束ではなく、順番です。
- 1週目、現在地を測る。NAATI公式の日本語練習教材か無料の模擬テストを1本、メモなしで録音し、数字と否定が落ちた数を書き出します。
- 2週目、メモの型を固める。ショート版の動画で1セグメントずつ、記号だけで書いて訳します。✗を打った語が訳に出ているか、録音で確かめます。
- 3週目、分野を回す。医療、法律、住宅、Centrelink、保険。1日1対話を録音して模範訳と比べ、出てこなかった語を頻出単語リストで拾います。
- 4週目、本番条件で通す。ヘッドセットなし、PC内蔵のマイクとスピーカー、静かな部屋で2本続けて。各対話29点の下限があるので、苦手分野が残っていればもう1週。
- 5週目、仕上げ。フル版の動画を1本ずつ通し、AI採点で同じ種類のミスが続くなら、その型だけを練習します。間に合わなければ、試験日の8日前までは無料で日程を変更できます。
メモの型が決まったら、同じ形式で1本録音して採点を見てください。落とした情報の種類が分かれば、次の週にやることが決まります。
無料の模擬テストを受けるYouTubeの無料練習動画の使い方
フル版は対話1本がまるごと流れ、セグメントごとにカウントダウンが入ります。ショート版は1セグメントだけなので、メモの練習に向きます。どちらも再生は止めません。止めて書く癖がつくと、本番で手が止まります。同じ動画を3回使い、1回目はメモなし、2回目はメモあり、3回目は録音して自分の声を聞く。「えー」の数と無音の長さが分かります。
日本語の練習動画(ショート版)
新着の練習動画
メモと語彙の解説をまとめた「NAATI CCL Preparation」は英語で、YouTubeチャンネルにあります。日本語で作られたCCLの解説はまだ多くないので、説明は英語で読み、練習は日本語の再生リストで回すのが現実的です。
当日の環境。機材と部屋
試験はオンラインのみで、自宅などから遠隔監督で受けます。NAATI(National Accreditation Authority for Translators and Interpreters)が挙げる機材は、カメラ、マイク、スピーカー付きのノートPCかデスクトップ(ヘッドセットは不可)、2台目のカメラにするスマホかタブレット、下り10 Mbps・上り1.5 Mbps以上の回線です。
- 前日までに、本番と同じ機材で模擬テストを1本。内蔵マイクで自分の声がどう録れるかを知っておきます。
- 部屋は一人で使える静かな場所。家族に時間を伝え、ドアを閉め、通知を切ります。机には紙とペンだけ。メモの細則はNAATIの受験者向け指示で確認します。
- 直前は詰め込みより、数字の往復と✗の確認を10分。声を出しておくと、最初のセグメントで喉が動きます。
結果は4〜6週間でメールに届きます。EOIの期限から逆算して予約し、受験料と最新の規定はnaati.com.auで確認してください。